平成14年10月8日

UJI 花散歩 四拾参



茶花でいう“なごり”の花―スミレ


  スミレ(菫)のイメージは、可憐な花、春に咲く花、ヴァイオレット……。スミレは世界に800種以上16属もあるそうですが、その大部分は熱帯性の木の仲間なのだそうです。日本には70種類ほどが自生し、更に変種を加えると約300種類あるとのことです。スミレの花の見頃は、サクラの時期とほぼ重なり、サクラ前線と同じようにスミレ前線が南より北上します。日本はスミレの都といわれ、全国何処をあるいても様々な顔をした様々なスミレが春を告げるのに出会いますが、この今の時期にスミレというのは如何でしょうか? 金木犀の香りの中で菫の花を見る……。茶花では「なごりの花」というのだそうで、時期を遅れて咲く花のことのようです。確かにものめずらしくなりますよね。スミレの名の由来は、大工さんが使う墨壷(墨入れ)という線引きに使った道具に、花の咲き始めが似ていることからきている、という説があります。この説が本当なら、既に奈良時代に大工さんは墨壷を使っていたことになります。なぜなら、奈良時代の万葉集に、
  春の野にすみれ摘みにと来し我ぞ
          野を懐かしみ一夜寝にける  山部赤人
 とあるからです。今でこそ、スミレ色=ヴァイオレットがどんな色かイメージするのは簡単ですが、昔はそうでもなかったらしいのです。キキョウ(桔梗)やリンドウ(竜胆)の方が和歌にたくさん詠まれているそうで、古人にとっては、あのような青紫色は、春のスミレではなく、秋の色だったようです。紫という色は高尚な色で、クレオパトラも好み、平安時代(それ以前でも)貴族の最高位だけが身につけることが出来た色だそうです。
  山路来て何やらゆかしすみれ草  芭蕉
 秋のスミレは如何でしたか? 不思議に二輪咲きました。花言葉は「ささやかな幸せ」です。(大拝殿手水舎周辺)



※菫物語二話―スミレ U「花散歩 壱百九拾五













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