平成15年2月16

UJI 花散歩  壱百四拾八

わが国は草も桜を咲きにけり―サクラソウ


 五つの花弁を持つ花がサクラに似ていることから「サクラソウ(桜草)」と名がつけられました。小さな花が観賞用として人気です。サクラソウは『万葉集』や平安の書物には顔を出しません。その栽培は江戸時代に盛んになり、後期に多数の品種が出現しました。

  わが国は草も桜を咲きにけり  一茶

花言葉は、「初恋」「希望」そして「早熟と悲哀」とあります。青春のはじまりと悲しみ、つまり咲く時期が早春で、咲く期間が極めて短いことからなのでしょう。サクラソウの花どきは、寒い冬と初緑の春との間にはさまる、その季節の感じ美しく表わした言葉に思えます。イギリスでは、「あの娘はサクラソウの花どきに嫁に行った」と表現することがあるそうです。オックスフォード大英語辞典(OED)は、比喩的に用いられた「青春の初め」の意味だけを示しています。田山花袋の「東京の近郊」という文章を味わってみましょう。大正時代の作品です。 「一面、桜草で、丁度毛氈でも敷いたようである。頗る見事である。で、日曜、土曜などには、東京から女学生達が沢山にやって来る。女学校で、運動会に生徒をつれて来たりするので、桜草は採られ、束にされ、弄ばされて、娘達の美しい無邪気な心を飾る。花の中にいる大勢の娘、実際絵に書いた美しいシインである。……のどかな春の日に、ぶらりぶらりとここらを子供でも連れて歩いて見ると、都会の煩労をすっかり忘れてしまったような心持がする」(楠ノ木荘周辺)













©生長の家宇治別格本山