平成15年6月11日

UJI 花散歩 弐百七拾壱

胸騒をおぼえそめきに―ビヨウヤナギ

 梅雨時の花というとアジサイが思い浮かびますが、小ぶりながらおしゃれな黄色の花・ビヨウヤナギ(未央柳・美容柳)とキンシバイ(金糸梅)【「花散歩 弐百六拾六」参照】も忘れられません。ビヨウヤナギは約300年前に中国から渡来した木です。枝先がやや垂れ下がる樹形で、葉がヤナギに似ているのでビヨウヤナギと呼ばれていますが、ヤナギ科の植物ではなくオトギリソウ科の植物です。中国では金糸桃といい、雄蘂がまさに金の糸、また葉が桃の葉に似ている、ということのようです。未央柳というのは日本でつけられた名前で、由来は、白楽天の「長恨歌」の一節にあります。

  帰り来たれば 池苑(ちえん)みな旧に依る
  太液(たいえき)の芙蓉 未央(びおう)の柳
  芙蓉は面(かお)の如く 柳は眉の如く
  此に対して 如何にぞ涙垂れざらん

 安緑山の乱後、玄宗皇帝は、かつて楊貴妃と共に過ごした宮殿を訪れました。楊貴妃の姿がないだけで、太液の池の芙蓉(蓮のこと)も宮殿の柳も昔のままでした。蓮の花は楊貴妃の顔のように見え、未央柳は楊貴妃の眉のように見え、涙は止まることがありませんでした。このことから、美しい花と柳に似た葉を持つ木を、この故事になぞらえて「未央柳」と呼ぶようになったと考えられます。また、花が美しいことから「美容柳」とも表されます。ヨーロッパでは古くから薬草として利用されています。花言葉は「薬用」です。

  君を見てびようやなぎ薫るごと
        胸騒をおぼえそめきに  北原白秋
                                            (智泉荘周辺)















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