平成15年7月5日

UJI 花散歩 弐百九拾五

咲くとき“ぽん”と言ひそうな―キキョウ

 キキョウ(桔梗)は、いわゆる秋の七草で知られる植物です。『万葉集』の中で山上憶良(やまのうえのおくら)が、「秋の野に咲きたる花を指折り、かき数ふれば七草の花。萩(はぎ)の花、尾花(おばな)、葛花(くずばな)、撫子(なでしこ)の花、女郎花(おみなえし)また藤袴(ふじばかま)、朝貌(あさがお)の花」と歌った“朝貌の花”とは、キキョウのことである、といわれています。アサガオ説、ヒルガオ説、ムクゲ説、キキョウ説がそれぞれ論争を展開しましたが、キキョウ説が強いようです。現在アサガオと呼んでいる植物は、熱帯アジア原産で日本には平安時代に入り、8世紀の『万葉集』の時代には渡来していませんでした。キキョウは、漢字で「桔梗」と書きます。古くはこれは「きちこう」と漢音で読んでいましたが、これが転訛したものといわれています。盆花・嫁とり花などと呼ばれることもあります。蕾の時の花弁の重なり方が、多くの花では、屋根瓦をふいたように一つの片の縁が他の縁に重なる「覆瓦状」なのですが、キキョウは縁と縁がぴたりと合う敷石状になっています。そのため、蕾は風船のように膨らんでいるわけです。

  桔梗の花 咲くときぽんと 言ひそうな  加賀の千代

 キキョウは、可憐で美しい花のため、多くの歌人や俳人に愛でられ、秋の季語のひとつになっています。また、凛とした姿は武士の好みに合ったようで、岐阜県土岐郡一帯に勢力をはせた土岐氏の家紋とされ、その一族の明智光秀の家紋もキキョウです。江戸時代には代表的な女紋とされました。

  きちかうのむらさきの花萎むとき
        わが身は愛しとおもふかなしみ  斎藤茂吉

  紫のふつとふくらむききょうかな  正岡子規

 環境庁植物版レッドリストでは、絶滅危惧U類(絶滅の危険が増大している種)になっています。花言葉は「誠実」「変わらぬ愛」です。(智泉荘周辺)














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