平成16年3月27日

UJI 花散歩 参百四拾

くれなゐ蕾匂ひこぼるる―ジンチョウゲ


 花の香りでもっとも印象的なものと言えば、ジンチョウゲ(沈丁花)でしょう。どこからともなく漂ってくると生命の息吹を感じます。春の夜,暖かい風に誘われて散歩などをしていると,ジンチョウゲの香りが漂ってきます。辿っていくとだんだん匂いが強くなります。花に鼻を近づけると,かなり強烈なので興ざめするほどです。姿を見るより先に、その芳香で存在が分かる花です。芳香が遠くに及ぶことは、秋のキンモクセイと双璧だといえるでしょう。中国原産で日本へ入ったのは室町時代といわれています。中国名は瑞香(ずいこう)です。「沈丁花」は日本で付けられた名前で、沈香(じんこう)と丁字(ちょうじ)の香りを併せ持つ花というところから来ています。咲いてしまうと白っぽいのですが、つぼみの時には小豆色のものと白いのがあります。花の形がよく似ていて黄色いのはジンチョウゲではなくオニシバリ(鬼縛り)です。「春まきホウレンソウ」の種子の袋に、「播きどきはジンチョウゲの咲く頃」と書いてありました。花言葉は「不死」「不滅」「栄光」です。
沈丁花 いまだは咲かぬ 葉がくれの
          くれなゐ蕾 匂ひこぼるる
若山牧水
沈丁の 香の石階(せっかい)に 佇みぬ 高浜虚子
沈丁の 葉ごもるる花も 濡れし雨  水原秋桜子

  ところで、沈丁花のことを「チンチョウゲ」という人もいるのをご存知でしょうか? その理由と思われる話が見つかりました。久米正雄の新聞連載小説「沈丁花」に「チンチョウゲ」と振り仮名が振ってあったそうです。沈丁花は「ジンチョウゲ」と読むべきだという投書がたくさん寄せられたそうですが、本人は「植物名はともかく、清音の方が作品にふさわしい」と譲らなかったそうです。

(宝蔵神社大拝殿入口周辺) 

※「花散歩 参百九拾壱」 芽!









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