平成17年4月2日

UJI 花散歩 参百五拾五

桜より一足先に咲いて春の訪れを告げる―コブシ


 花の姿は中国原産のハクモクレンによく似ていますが、コブシは日本原産の植物で、中国には自生していません。まだ彩りのすくない早春に、いち早く白い花を一面につけ、優雅な芳香を放つコブシは、美しく印象的です。桜より一足先に咲いて春の訪れを告げるため、日本の各地でコブシの開花を農作業の基準としており、別名「田打ザクラ」「種蒔ザクラ」などど呼ばれます。また開花状況を見て、「花が多くつけば豊作」「上を向いて咲けば雨風が少ない」などと、その年の農作物の出来不出来を占うという習慣も各地にあります。
 コブシは、漢字では普通「辛夷」と書きますが、植物図鑑によると「拳」の字を当てていました。「つぼみが拳に似ている」というのですが、ある国語辞典をひいてみると「果実の形が子どもの拳に似ている」と書いてありました。実を知らないので何とも言えませんが、いずれ実もアップしてみたいと思います。『広辞苑』によると、コブシにあてられた漢名「辛夷」は、中国では別の植物、すなわちモクレンのことを言います。コブシは、ハクモクレン(白木蓮)【「UJI 花散歩 壱百七拾参」参照】に似ていますが、それよりは小さい花です。ハクモクレンとの違いは、コブシの花の下には小さな葉っぱがついていることです。「辛夷咲くあのふるさとへ帰りたい」という歌の一節がありますが、コブシの花が咲くと北国にも春が来るのでしょう。この花にまつわる哀しい伝説を紹介しておきましょう。壇ノ浦の決戦に敗れた平家の落武者が、逃れ逃れて熊本の山奥まで来たときのこと。ある朝目を覚ますと、あたり一帯、全山に源氏の軍勢の印である白旗がはためいていました。落武者たちはこれを見て、もはやこれまでと全員が自決してしまいました。しかし、実はこの白旗と見えたのは、コブシの花だったのでした。(智泉荘庭)









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