『 宇治だより 』  宇治を愛する人  

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『宇治だより』 第28号  昭和63年4月20日 

  私と宇治

    岩手教区教化部長 宇治別格本山前祭司部長(当時) 萩野 晴敏


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献饌へ風の届けし鶯(おう)の声――62年春末一稲荷神社月次祭にて)
20年位昔は、今の浄火場を含む周辺が奥深く樹林であったせいか、
鶯が多く鳴き、山つつじも彩った。

私の、宇治への縁は昭和29年12月献労練成(開始は9月)。
急な、細い山道(現金剛神参道)を登ると展望が開けて一息。

見渡す光景は、切り倒された大小の樹木、
段々の田圃が重なり右手仮道場方向へ下り道が伸び
左背後の杉山は端然として天に向かい、
静なる活気満つる中での十日間の練成行を想う時、
誰かここを「思案峠」と名づけ、帰りを「見返り峠」とか。

私は毎日薪割に専念。芋粥の味は忘るべくもない。
半日“少年院”へ講話に行き、 「又きてくれエー」
と声を限りに鉄格子一杯に手を振られた情景が残る。

その後、山口島根、高知、本部、群馬栃木を経て宇治駐在(39~43)、
練成に従事する4年間。

一応諸工事成った宝蔵神社周辺境内全域への造庭に着手。
現在の古松、太いもみじ、庭石等は智泉荘庭園内から間引き移し。
“手水舎”の赤松は山から採植の自然樹形の美松。

苗物は桜、もみじ、さつき、つつじ類を、
下の駐車場から金剛神、龍宮参道へかけて、
北里課長と偕に好季を得てせっせと植付けていった。

南天、ひいらぎ等は山採り。頂いた白萩や珍種二度咲きの萩。
“精霊招魂神社”裏庭に「忠」の字さつき。
赤咲きは英霊達の赤誠を、囲む白花は浄魂を、
常緑葉は青人草の繁栄を表現する平和世界を祈りつつの力作。

身代わり献花
これらの花は全て宇治の聖域に鎮まり座す諸神諸菩薩を始め、
遠津祖諸霊達、諸英霊、流産児諸霊への四季とりどりの献花、
慰霊のための願いが込められており、更に20年を閲し、
桜も既に大木となりて春爛漫。

この故にか宇治は殊更懐かしく、時折帰る私を待つ愛しい花木達。
私も何れ祀られる身となるが、
花達は年々に献花を続けてくれるであろう。
宇治は安らかな有難いふるさとである。


 

 

 

 


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